相続税を分割で払える制度、とは

文書作成日:2017/07/05

相続財産がすぐに換金できそうにない不動産ばかりです。相続税は分割で支払えると聞きましたが、本当に可能でしょうか?

父が他界しました。父の遺産は、広大な自宅敷地、先代の頃からの貸地や山林など、遺産の大部分を不動産が占めており、預貯金はほとんどありません。また、自宅以外の不動産ですぐに売却換金できそうなものもありません。相続税を1,000万円ほど納めないといけないのですが、自宅を売却せざるを得ないのでしょうか。相続税は分割で支払えると聞きましたが、本当に可能ですか?

相続税は、納期限までに現金で一括納付することが原則となっております。しかしながら、税務署長が許可した場合に限り、延納(分割納付)又は物納(現物納付)が認められています。

相続税は、個人の方が負担する他の税金と比較すると、その税額が大きくなることが多くなります。それを分割して又は現物で納付できるありがたい制度は設けられているのですが、実際には、誰にでも簡単に認められる訳ではありません。

延納とは、相続税を最大20年にわたって分納できる制度で、納税者が税務署長に申請し、許可されることにより利用できる制度です。また、分納するということは、納期限までに納税できなかった金額については国から借りていることに他ならないため、担保を提供しなければなりませんし、0.8~1.4%の利息(利子税)の支払いが必要となります。

税務署長に延納を許可してもらうためには、以下の4つの要件を満たしている必要があります。

  1. 相続税額が10万円を超えること
  2. 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であるということ
  3. 納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
    (ただし、延納税額が少額で延納期間が短い場合には不要)
  4. 相続税の申告期限までに延納申請書及び添付書類を税務署長に提出すること

4つの要件の中で実務上最もハードルが高いのが、延納が許可されるのは「納付を困難とする金額の範囲内である」という部分です。言い換えると、「納付を困難とする金額=延納を許可してもらえる金額」は、「納付税額」から「現金で一時に納付することができる金額」を控除した残額のみとなります。

では、「現金で一時に納付することができる金額」とは、どのように計算するのでしょうか?

結果、将来のため、子供の進学等のためにと長年かけて貯めた家庭の貯金の大部分を相続税の納税に充てなければならず、残ったのは自宅などの不動産と数ヶ月の生活費のみ、ということになります。

ご自宅などの先祖代々からの不動産を守ることも大切ですが、ご家族の今後の生活も考え、ご自宅の一部売却などの検討も必要ではないでしょうか?

<まとめ>

  • 相続税を延納(分割納付)するためには、税務署長の許可が必要です。
  • 延納は、国からお金を借りていることになるため、担保の提供や利息の支払いが必要です。
  • 延納は、相続した預貯金だけでなく相続人の固有の預貯金も合計した中から、最低限の生活費を控除した残額全てを相続税の納税に充て、それでもなお相続税が支払い切れない場合のみ許可されます。

<根拠条文>相続税法第38条、第39条

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